ストリートミュージシャンになった話

私は今フランスに留学している。留学が決まった頃から、何かしら どんな形でもいいからフランスに爪痕を残したいと企んでいた。爪痕を残せなかったら私の留学は失敗なのだ。それくらい本気だった。

 

さて、では何をしようか。

私はコミュ障なのとフランス語能力が低いので親しい友達を作って一緒に旅行に行くなどはできない、単位も取れる自信がない、彼氏ができる気もしない()

 

いや待てよ。

音楽があるじゃないか。というか私には音楽しかない。

フランスは、観光地では特に、毎日といっていいほど誰かが音楽を奏でている。日本でも駅前や高架下にそういった方々がいるが、日本で演奏するのはどうも恥ずかしくてできそうになかった。

しかしここは異国。

たとえ1つや2つ失敗したところでどうせ数ヶ月後にはいなくなるんだし と考えたら気が楽になった。

こうして私は ストリートミュージシャン として フランスに爪痕を残すことに決めた。

 

 

私の音楽理念はこうだ。

①音楽はすべての人に平等である

②音楽で世界を変えることができる

 

…何を急にかっこつけたようなこと言ってるんだと思うかもしれないが、残念ながら実際そうなのである。

 

大抵ストリートミュージシャンは演奏者の前にお金を入れられる箱を置いている。もちろん、これを生業としてる人もいるのだろう。

私はそのような箱を置かなかった。「お金はいりません」という意思表示をしたかったのだ。

私はお金稼ぎのために音楽をするのではない。純粋に私の音楽を聴いてほしかった。裕福な人にも、貧乏な人にも、白人にも、黒人にも、黄色人にも

 

(※もちろん、私がアマチュアだから誰もお金を入れてくれないんじゃないかという不安もあって置かなかったという理由もあるが、もし私がめちゃめちゃ上手かったらこんなことせずにさっさとプロになっていたはずだ)

 

そして、私は日本の音楽をやることにした。単純に日本のことを知ってもらいたかったから。知らない曲ばかりだとつまらないので外国人が知ってそうな曲を多めにして。

ヨーロッパにとってアジアというのは遠い遠い国だ。昔アジアのことを 極東 と表現していたが、今も変わらない。インターネットの普及により、日本の文化や食を知る外国人は増えてきた。

しかし日本の音楽を知っている人は果たしてどれくらいいるのだろうか。

日本にはこんな音楽があるんだよ ということを知ってもらって、欲を言えば興味を持ってもらえたらいいな と思って選曲した。

音楽も国と国を繋ぐ架け橋になる。音楽で世界は変えられると本気で思う。

 

と、ここまで豪語したものの、いざ実行に移すとなるとこれはこれは緊張の度を超えて緊張した。ここ数年で1番緊張したんじゃないか。冷静に考えてほしい。一人で家から楽器を持って観光地である大聖堂に赴き、広い敷地で一人で演奏するのである。まさに独壇場。

外に出た瞬間と、大聖堂に着いた瞬間

あ、帰りたい

と思った。でもここまで来たらもう戻れない。賽は投げられた…!と自分を奮い立たせて挑んだ。

 

結果、ボロボロだった。

立ち止まって私の音楽を聴いてくれる人もいた。嬉しいことなのだけど、"見られてる"というのに意識が行ってしまい、さらに緊張して音は間違えるわリードミスするわで散々だった。

 

それでもやってよかったと思える出来事があった。

「お金はいりません」という意思表示をしていたのにもかかわらず、私のカバンにコインを入れてくれた人、一緒に写真を撮ってくれた人、曲を知ってる日本人に「感動しました」「頑張ってください」と言われたこと。

f:id:chezminachi:20190323201319j:image

(多いとか少ないとか嬉しい悔しいといった気持ちはなく、ただただありがとうという気持ちだった)

 

こんな私でも誰かの心を動かすことができる。

この一歩は終わりではなく始まりだ。次こそは満足のいく演奏がしたい、そう思いながら今日も練習に励む。